第3話 大丈夫,怖くないよ
新しい世界である高校に入ることを躊躇しているひよりちゃんの手を,小春ちゃんが取って二人でその一歩を歩み始めます.桜の舞う中を歩むひよりちゃんと小春ちゃんの絵はとても印象的です.
放課後にひよりちゃんから連れてこられたのはフライフィッシングの専門店!レアなお店ですね.
友達いたんだね!の小春ちゃんの笑顔が素敵です.腹黒さという言葉は安易な表現であまり好きではありませんが,そのような小春ちゃんの一面がわずかに表れているシーンでもあります.
三人目のメインキャラである恋ちゃんの登場です.制服の上にエプロンとは・・・あざといかわいい!地味にネクタイを付けているのも恋ちゃんの真面目さの表れですね.
フライのマテリアル(材料)であるキジを見て,鳥の死骸で魚を釣るの!?と連想する小春ちゃん.小春ちゃんの物騒さはここでも出てますね.かわいいです.
ただ,大型の魚が鳥を捕食することは実際にあるため,ありえないとも言い切れない絶妙な物騒さではあります.一例として,ロウニンアジは鳥を捕食することがあるそうです.
スローループのキレ芸担当の恋ちゃんの表情がいいですね.確かにろくでなし気味な恋ちゃんの父親ですが,なんだかんだ言ってお店をきちんと手伝っている恋ちゃんは本当にいい娘です.しかし,出産に釣りで立ち会わなかったら相当に母親からは恨まれるでしょうね・・・.スローループの登場人物は優しい人ばかりです.
自分の知らない過去の話題に興じるひよ恋を見て膨れる小春ちゃん,自分も転勤族であったため同様の思いはよくしましたね.それを羨ましいとひよりちゃんに伝えられる小春ちゃんはひよりちゃんの寸評通り,本当に素直ですね.
今はみなひーだと幼馴染の恋ちゃんに家族マウントを取る小春ちゃんもかわいいですね.ひよりちゃんと友達であることよりも家族であることを重視している,とまでは言えませんが,ひよりちゃんを大事に想っているために出た言葉であることは間違いないでしょう.
ひよりちゃんの誘いで,ひよりちゃんのお父さんとの思い出の地巡りを二人でします.ここで登場する背景は実際の横須賀の風景を元にしていますので,聖地巡礼も可能です.自分も横須賀でこの灯台に上りました.小春ちゃんは灯台まで来るのが体力的にきついようで,息が上がっているようです.
灯台に上りながら,お父さんに連れられてきた幼少時代を思い起こすひよりちゃんです.幼少時はお父さんの手を取って上った灯台の踊り場(頂上)に一人で上がれるようになり,今度は小春ちゃんの手を取って踊り場へと誘います.高校に入る際に手を取ってくれた小春ちゃんに対する意趣返しですね.
先ほど購入したフライセットをひよりちゃんは小春ちゃんにプレゼントします.二話の最後でフライに対するこだわりを小春ちゃんが言ってくれていたので,それに報いたかったのでしょう.次回は管理釣り場に行こうと誘い,ひよりちゃんの好きなものを小春ちゃんに見せたかったんだと伝えます.これも相当に素直な発言だと思います.なかなか言えないですよね.
その発言を聞いて,目を見開いて喜ぶ小春ちゃんは思わず息を吞んでしまいます.後々わかってきますが,小春ちゃんの心情描写をなるべく避けながらスローループのストーリーは語られていきますので,表情や仕草から心情を察する必要があります.ひよりちゃんが小春ちゃんのために,一緒に色々と散策して,プレゼントもして,自分のことを知ってほしいという気持ちを述べてくれた.慣れない街,慣れない家の中でも,ひよりちゃんのお姉ちゃんであろうと(このあたりも後ほど触れられます),頑張って(無理をしながら)ひよりちゃんをリードしようとした小春ちゃんにとっては,とても嬉しい発言であったのでしょう.
ひよりちゃんはやっぱり天然ジゴロです.
また,このやり取りをしている最中,ずっと二人は手をつないでいます.手を繋ぐという行為にはここまで描写されたような,手を取り相手を引っ張ってどこかに進むという意味合いだけではなく,互いの関係を結ぶ,繋ぐそういったノット(結び目)としての意味合いにもなるということでしょう.ひよりちゃんと小春ちゃんの関係性がより深まったことを示唆しています.
最後に恋ちゃんの家である吉永家の描写がされます.店番のみならず,家事や弟たち(それに加えて親父)の面倒まで任されてる恋ちゃん.大変そうですけど,かわいい良い娘ですね.
画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)
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