【漫画】スローループ 1話 感想 変わった女の子同士の出会い

漫画

今更ながら、スローループにドハマりしていますので感想を記していきます。

アニメ版も良いのですが、うちのまいこ先生の繊細な見せ方が光る漫画版が素晴らしいと思いますので、まずは漫画版からレビューしていこうと思います。

第1話 とても変わった女の子

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

スローループを読み始めたきっかけですが,自分が元より釣り好きなのもあり,おっさん趣味+女子高生もの(ゆるキャン△など)が流行っていた時期に釣り+女子高生の組み合わせもあるはずだと探し回っていた際にスローループを見つけました.秋田書店の放課後ていぼう日誌の方が先行して開始していましたので,芳文社のきらら系にも釣り+女子高生の波が来たかという感覚で,ある意味二番煎じのように感じていたのも事実です.

つまり,日常系の派生ものという認識で読み始めましたので,この第一話冒頭で「日常系にしてはずいぶんと重い話だな・・・」と感じたのは言うまでもありません.後々まで読み進めるとうちのまいこ先生の描きたかったことがわかってくるのですが,少なくとも日常系の「ゆるふわな日常」が最初から最後まで続いていくノリを期待していると,いきなり顔面パンチくらうこと請け合いです.

また,題材としているフライフィッシングも,釣り業界的には一番市場の小さいマニアックな釣りジャンルでしょう(憶測ですが).先行していた放課後ていぼう日誌がメジャーな釣り(堤防からのエサ釣り+若干のルアー釣り)を対象としていたので,差別化のために泣く泣くそうせざるを得なかったのかと心配しましたが,うちのまいこ先生がひよりちゃんと同様にフライフィッシングの経験しかない方のようですので良い意味で差別化が図れると判断したのかもしれません.

話がそれましたが,スローループの各話の題名はその話のキャラクターのセリフから取られているのですが,非常に意味深なセリフが採用されています.今回の題名「とても変わった女の子」は冒頭で描写されるように,海でフライフィッシングをする女子高生(海でフライフィッシングをする人は極めて珍しいです(というか見たことない))であるひよりちゃんを指すかのように見えます.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

また,一話でのひよりちゃんの釣りへのスタンスが描かれているのが上記のコマです.釣りをする人間には大なり小なりわかる気持ちですが,ごみごみした人間社会や都会から逃避してひとりで自然と向き合うことが,釣りの目的でもあります.アウトドア趣味にはおおむね共通する認識でしょう.釣り場で周囲と話すことを楽しみにしている方にはごめんなさい・・・でも話しかけて欲しくないです・・・.

大きく深い帽子をかぶり,周囲からの接触を忌避するひよりちゃんをギャグ調で描写していますが,思春期の女の子にとっては極めて重いシーンといってよいでしょう.同時にこの釣りという行為がお父さんの影に隠れる行為に相当していることも説明されます.そういった意味では「フライしかできないというよりはフライしかやらない」という方が心情的には近いのかなと思います.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

そんなひよりちゃんの前に現れるのが小春ちゃんです.重くなった空気をぶち壊すためかスク水で海に飛び込もうとします.

正直,後まで読むとここまで突飛な行動を取る子でもない気がするのですが,まあ若かりし時の過ちということで流しています(笑).無理やりフォローするなら,初めての町で初めての家族との対面が控えているので混乱気味だったのでしょう.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

さらに,小春ちゃんの飛び込みを阻止するために,ひよりちゃんが釣り針をひっかけます.これもその後のスローループのノリからすると違和感のあるマンガ的展開ですね.細かいことを敢えて指摘すると,メバルを釣る竿,糸,釣り針で走る人間を止めるのは不可能です.目が良いメバルに対しては特に細いリーダーを使用しますのですぐ糸が切れるでしょうね.

ただ,もしかしたら小春ちゃんがひよりちゃんのことを知っていて,話しかけてほしかったがための奇行であったのかも知れません.事前に,相手方の同い年の女の子(ひよりちゃん)が海で釣りをしていることを知っていたために,当日見かけた際にひよりちゃんだと推測できた可能性は考えられます.

そうなると,ひよりちゃんからアクション(ひっかけようとする)が得られた時点で目的は達成しており,小春ちゃんは立ち止まろうとしていたところに,ちょうど釣り針が引っかかっただけ・・・という可能性も考えられます.うーん少し苦しいフォローですね・・・小春ちゃんの性格からすれば,普通に話しかければいいだけだし・・・.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

そのまま倒れこんだひよりちゃんと小春ちゃんの対面です.この前のコマでひよりちゃんの帽子が外れて落ちてしまっています.深く大きな帽子によってお父さんの影に隠れて逃避を続けていたひよりちゃん,その帽子を外すきっかけを作った小春ちゃん,二人の点対称な構図が,人間関係の基本構造(持ちつ持たれつ)であるループを構築していくことを示唆していると思います.それまで帽子で隠れ気味であったひよりちゃんの右目が見開かれているのも偶然ではないでしょう.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

はいかわいい.先にも述べましたが,海に限らず川でもフライをしている人を自分は見たことがありません.二週に一度は魚釣りに行く自分でも見たことないレベルなので,相当レアな釣法です.私の居住地が比較的南の方というのもありますが,関東以北ではもう少しフライ人口が多いのでしょうか・・.

ひよりちゃんのように海でフライとなると更にレアだと思います.フライフィッシングは向かい風に弱い,その他の釣り方(特にルアー)と比べて飛距離が出ない,仕掛けを沈ませられず水深の深いところに向かない,キャスト(仕掛けを投げる)の際に周囲に広大なスペースが必要,といった欠点があり,あまり海(特に人のいる堤防)でやりやすい釣り方ではないと個人的に思います.それでもフライをやるというところは,この漫画のキャラが変態で面白いところです.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

魚釣りを見たいという小春ちゃんに,何か参加させようとタモ入れをお願いするひよりちゃん.展開としては無事にこの後,メバルが釣れてくれて小春ちゃんにタモ入れをさせることに成功するのですが,現実準拠で考えると,色々とハードルの高いお願いではあります.

まず,タモ入れするレベルの大きさの魚がそんな短時間で釣れるはずがない!!! 小さい魚でも何でもタモ入れしてもらうこととすれば,それのはいいのですが,初心者が魚釣りを横で見ていても一時間何も起こらないというのはざらにありますので,普通は飽きます(笑).そんな中,初めて会った初心者の人を待機させるというのはきついですね.

さらに言えば,このタモ入れという作業は意外と難しい作業です.作中の堤防はかなり低い(海面から1m以内)のでそこまで難しくはないですが,水面まで距離がある堤防で伸縮式のタモを使用する場合,タモの扱い方を知らない方が使うと,魚を引き上げるときに結構な確率で折ります.タモは上下垂直に引き上げるものでして,釣り竿のように角度を上げるように持ち上げると折れます.一本一万円程度はするタモですから,全くの初心者にいきなり使わせるというのはちょっと難しいですね.(完全に余談です)

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

無事にメバルが釣れてくれたので捌いて食べる二人.こういった釣り場で魚を捌いて食べるというのも意外とハードルは高いです.まず最大の問題は真水の供給です.魚を捌く際には大量の真水が必要です.

鱗取り,内臓取り出し後の洗浄に大量の真水が要ります.また,キッチンペーパーのような魚を拭く道具も要りますので,結構な大荷物になります.包丁,まな板,お皿,キッチンペーパーのような拭くもの,ごみ袋,と最低でもこれくらいの道具は必要になります.それに加えて真水(水道があれば何とかなりますが,魚を捌くというのは割とマナー違反行為ではあります)に釣り道具一式を持っていくことになります.歩きで釣りに行っているひよりちゃんには少々過酷な装備でしょうね.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

この後も度々顔を出す不穏な発言を発する小春ちゃん.おそらくこの後もこの理由は出てきていないと思いますが,小春ちゃんがゲーム好きなのでそこから出る発言なんですかね.推理もののドラマが好きだという描写はないように見えます.小春ちゃんのように明るいキャラからでるこういった不穏な発言は面白いですね.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

食事会の時刻が来たので帰宅しようとするひよりちゃんが,その理由・経緯を小春ちゃんに話すシーンです.この短い時間の交流で自分のバックグラウンドを話すくらいに打ち解けられたのは小春ちゃんの人柄はもちろん,釣りという糸を使うレジャーに何かを結ぶ役割を与えているのでしょう.こういった真っすぐな発言を言うことができるひよりちゃんの言葉が小春ちゃんにも響きます.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

小春ちゃんの驚いたような呆けたような表情が素晴らしいです.ひよりちゃんも小春ちゃんも家族を失った悲しみ,新しい家族と会う今日の不安,そういったものを同じように感じていて「海に来る」という行動を実行し,「釣り」を協力して楽しむことができた.その共通感覚のピースが小春ちゃんの中でハマる瞬間,驚くとも呆けるともとれない複雑な感情が涌いているであろうことをかわいく表現していると思います.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

小春ちゃんのおかげで気が楽になったと吐露してくれるひよりちゃん,小春ちゃんと海で出会えなければ冒頭の描写よりも暗い表情で食事会に赴いていたことでしょう.小春ちゃんはそのお礼を遮って,ギャグ調のセリフを発します.ここで小春ちゃんの表情が前髪で隠れていますが,小春ちゃんの表情を明示しないことで,少なくともこの瞬間の小春ちゃんは全面的な笑顔を作れていなかったのではと推測しています.ひよりちゃんの素直な言葉に「ふりまわされている」のはいつも小春ちゃんのほうです.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

ひよりちゃんと小春ちゃんが正式に家族となって一話は終わります.グイグイくる小春ちゃんに戸惑いを見せるひよりちゃんですが,自分の天然ジゴロ発言が小春ちゃんに響いていることを理解していないため致し方ないところです.

こういった無意識の発言・行為が誰かを助けることもあるというのは後程出てくる恋ちゃんとの関係でも描写されるところです.ひよりちゃんのモノローグで「とても変わった女の子」が小春ちゃんのことだと明かされますが,「両方じゃい!!」というのが正しいツッコミでしょう.

背景が海と二人でメバルを食べた東屋にされていることも重要ですね.あの時点で衣食住ならぬ「釣り・食・住」が揃っており(?),すでに「家族」であったこと「ループ」が形成されたことを暗示しているのだと思います.

読み返すと感想というより解説のようになっている気がしますが,自分はこういう描写をこう読み取りましたという「主観的な説明」ですので,これは感想です!

スローループの魅力が多少なりとも伝われば幸いです.

画像の引用元:うちのまいこ, スローループ, 1巻(芳文社)

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